今月のイッピン[皐月]

作品名:〚藤盛り〛抹茶碗

紫の雲とぞ見ゆる藤の花
いかなる宿のしるしなるらむ

この藤の花が紫の雲かとも見えるほど美しく咲き誇っているのは、
この家のどのような吉兆なのであろうか
(「栄花物語」かゞやく藤壺巻 他)

長保元(999)年、関白藤原道長の娘彰子が一条天皇の元に入内します。
これは入内祝いの調度品の屏風に書かれた和歌です。

詠んだのは当代切っての文化人藤原公任。

藤原氏の象徴である藤の花を瑞兆の紫雲と見て
藤原道長の栄華を祝しています。

藤は古来より高貴なもの、
長寿と子孫繁栄を表すものとして
尊ばれてきました。

【楽入窯】の妙なる職人技が息づく〚藤盛り〛。

その名の通り美しく咲き誇る藤の花が描かれています。

紫色、白色、ピンク色と色とりどりに咲く藤の花。
華やかながらも上品な雰囲気を醸し出します。

ちなみに「源氏物語」作者紫式部が
女房として仕えたのが藤原彰子です。

冒頭の和歌を屏風に書いたのは
能書家で三蹟の一人、藤原行成。

この時公任は(わざと)遅刻して、
せかされてもなかなか和歌を発表せず、
居合わせた道長や行成をやきもきさせます。

そしてやっともったいぶって披露しますが、
和歌も時の権力者道長を持ち上げる内容で…

平安時代、京の都で繰り広げられていた歴史の一幕。
いかに藤原氏が栄えていたかがわかります。

現在放送中の大河ドラマ「光る君へ」でも
お馴染みの登場人物たちへ思いを巡らせながら
初夏のひととき、一服をお楽しみください。

ぜひこの機会にお求めください。

 

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